当クリニックにおける胎児超音波検査について
妊娠中に行うことのできる検査が限られているのは、赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいて、直接見て触れることができないためです。子宮内の赤ちゃんを観察する方法として現在では超音波検査が最も広く用いられています。
超音波検査では、大きく分けて2つのことが分かります。
- 形態学的観察:赤ちゃんの断層面を観察するための検査を行います。赤ちゃんの数や推定される体重、奇形や腫瘍・へその緒や胎盤などの異常が分かる検査です。
- 生理的機能観察:赤ちゃんの成長や動き、へその緒の血液の流れの検査、赤ちゃんに栄養酸素などを与えている血液の流れの検査、赤ちゃんの心臓の動きの検査(心機能検査)などを行い、赤ちゃんが元気かどうかを観察します。
お腹の中の赤ちゃんをみることができる超音波検査といえども、もちろん分からないこともあります。
1. 染色体異常:染色体異常とは染色体の数やその構造の異常をいいます。
例えば、21番染色体が1つ多いケースだと、赤ちゃんはダウン症ということになりますが、超音波検査でそれを診断することはできません。
2.性質:超音波検査は、基本的には形を見る検査です。例えば、赤ちゃんの腎臓に嚢胞(水が溜まったような状態)があることが分かっても、その中の物が水か血液かどうかなど、その性質については分かりません。また機能的な成熟や発達を評価することもできません。
3.小さい所見:赤ちゃんは全体的に小さいことやその向きにより、また超音波ビームが届かないことにより超音波診断ができない場合があります
胎児超音波検査の考え方と時期について
当院での胎児超音波検査は、一般的な産科の妊婦健診で行われる胎児スクリーニングとは大きく異なり、子宮内にある胎児、胎盤、臍帯、羊水などを詳細に観察する胎児の精密検査と考えています。
とくに他施設と大きく異なるのは、妊娠初期(妊娠11週−13週)より詳細な胎児の精密検査をしている点と妊娠中期(妊娠18-20週と妊娠24-27週)において胎児心臓の精密精査を施行している点です。
もちろん上記以外の週数においても胎児の精密検査は行っており、胎児が元気であるか、五体満足であるかなどを隈無くチェックします。
1妊娠初期から12週頃までの詳細な胎児及び子宮内の観察
妊娠週数通りに胎嚢 胎児の大きさが順調か 胎児心拍は週数通りの脈拍数かなどをみます。出血はないか 卵巣は腫れていないかなども見ていきます。
2妊娠初期(妊娠11週−13週)の胎児超音波精密検査
妊娠11週~13週頃に赤ちゃんの首の後ろにむくみがあり、英語ではNuchal Translucencyといい、頭文字を取りNTと呼ばれています。ほとんどの場合、このむくみは生理現象で出てくるもので、すべての赤ちゃんにNTは存在しています。NTそのものは病気を表しているものではなく、生理的なものなのかどうかはNTを見るだけでは分かりません。
当院では、NTを正確に測定し、かつNT以外に鼻骨・顎の骨・臍帯血管の数・心臓内の血流・心臓に流れる静脈管内の血流・臍帯血流・手足の位置などで胎児のチェックを行った上で、胎児の染色体異常の確率計算を行います。染色体異常の確率計算なので染色体異常を診断するものではありません。染色体異常の可能性が比較的高い症例を検出するための検査と考えてください。染色体異常の確定診断には絨毛検査や羊水検査が必要です。
検査の結果で染色体異常のリスクなどを十分説明をさせて頂き、ご希望の患者様には絨毛検査や羊水検査を施行している施設をご紹介します。
3妊娠中期 (妊娠18週-27週) の胎児心臓超音波スクリーニング検査
当クリニックでは、超音波で赤ちゃんの先天性心疾患の出生前スクリーニング検査を行っています。
先天異常のなかでも心疾患はもっとも頻度が高く、小さなものまで含めると、出生児の約100人に1人にみられます。このうち、出生後早期に治療が必要となるものが、300から400人に1人みられます。出生後早期に治療が必要な病気を発見するのが目的です。
このような場合は、出生後すぐに治療が受けられる施設に適切な時期に転院していただきます。赤ちゃんの心臓が見えやすい妊娠18週~27週頃に検査を行うのが最もよいです。この時期を過ぎていても、検査は行えますが、診断が難しくなることがあります。
スクリーニング検査とは、すべての方を対象に、ちょっとでも異常の疑われる方をみつける検査です。異常が疑われる場合は、診断のために責任をもって他院での専門医の検査を受けていただくこともあります。スクリーニング検査では、異常をできるだけ見逃さないことが大切ですので、精密検査必要という結果でも、専門医の検査を受けた結果異常なしというケースもあります。ただし、非常に診断の難しい疾患や出生後に発生する疾患もあり、診断率は100%ではないことをご了承下さい。
超音波検査の結果について
赤ちゃんの超音波検査の結果は、基本的にご両親の情報と考えられます。その情報には性別の情報や赤ちゃんの奇形かどうかの情報、染色体異常があるかどうかの情報まで様々なものが含まれます。そのため、当然患者様にはその情報を知る権利があると同時に、反対にその情報を知らせてほしくない、つまり知りたくない権利もご両親にあります。
一方、医師には検査結果を説明する義務があります。そのため検査を行う前に、まず赤ちゃんの情報を全て知りたいのか、ある部分だけを逆に一切知らせてほしくないのかなどを医師にお知らせいただくことが重要であると考えています。この機会に、ご夫婦でこのことについて十分ご相談いただき、アンケートにお答えいただければ、そのご意思に沿って対応させていただきます。
なお、アンケートを提出したあとで、それを訂正したい場合は、直接外来で、医師または看護師にご相談ください。
なお、胎児超音波検査は当院に通院の方限定となっておりますのでご了承ください。